2014年度ロレックス賞
ヤングローリエイツ受賞者

アルチュール・
ザン

カメルーンでの心臓病治療に
新たな発明の光


アルチュール・ ザン アルチュール・ ザン

アルチュール・ザンはアフリカの鼓動を聞いている。ザンが発明したタブレット型心臓モニター、Cardio Padは、母国カメルーンはもちろん、アフリカ全土における心臓医療の改革を約束するものである。携帯電話の通信エリア内でさえあれば、カメルーンの人里離れた地に心臓医療を届けることができる。

ザンは、カメルーンの首都ヤウンデから22 km離れたムバンコモという町で育った。水道は無く、電気の供給も途絶えがちだった。「このころ、あるもので間に合わせる、ということを学びました。」と、彼は話す。

ヤウンデの大学でコンピューター・エンジニアリングを学ぶ中で、人々の生活を変えられるかもしれないという、コンピューターの可能性に魅了されるようになった。貧しい子供時代ゆえに、問題を解決して人間の生活を向上させようと、意欲を燃やした。

国民の健康を向上させることが、母国に貢献する最善の道だとザンは考えた。生活習慣の変化や信頼できる初期診断を得られないことなどから、特に農村部で心臓病による死亡率が高まっていることに気付いたザンは、丈夫で持ち運び可能、いつどこにいても心臓病を診断できる安価な機器を発明した。2014年、ザンはこの発明によって、米国のビジネスマガジン、フォーブスにより「アフリカで最も将来有望な起業家30人」に選ばれた。

「私は他人が抱える問題に敏感です。私は技術者であり研究者です。でも、私は自分の技術を他の人々のために役立てたいのです。」

アルチュール・ザン

Cardio Padの使い方

専門医による遠隔診断

  • タッチスクリーン式のCardio Padは、看護師や専門技師がワイヤレス電極を患者に装着して操作する。どこでもほんの数分で使用可能である。機器がデジタル心電図(ECG)で測定するのは、心臓の電気伝導系だけではない。心拍の回数と規則性、心室の大きさと位置も測定し、異常の有無を判定する。

  • データは携帯電話回線を介して心臓専門医に送信される。この医師は別のCardio Padに受信したデータをダウンロードして測定結果を診断する。診断結果は治療方法の指示とともに、患者を担当している看護師へ戻される。多くが複雑な医療機器の操作に必要な電気が安定供給されていないカメルーンの農村部でも、Cardio Padは使用可能である。「Cardio Padにはバッテリーが内蔵されていて、7時間以上使用できます。」とザンは説明する。

基本データ

  • Cardio Pad
  • 国立データセンター
  • 心臓専門医
  • 01

    データは携帯電話回線を介して国立データセンターに送信される。

  • 02

    心臓専門医がCardio Padにデータをダウンロードし、測定結果を診断する。

  • 03

    心臓専門医は診断結果と治療方法の指示を患者担当の看護師に戻す

カメルーン

アフリカの中心

出典:国連マップ

カメルーンの保健

  • 国土面積:

    475,440 km2

  • 人口:

    2,200万人

  • 平均年収:

    2,270米ドル

  • 平均寿命: 男性 / 女性

    55歳/57歳

  • 心臓疾患による年間総死亡率:

    14%

  • 全人口に対する内科医の数:

    約2,400人

ショートフィルムを 見る

2014年度ロレックス賞ヤングローリエイツ受賞者、アルチュール・ザン。携帯電話の通話エリア内であれば、ザンが発明したタブレット型心臓モニター、Cardio Padを使いカメルーンの人里離れた地に心臓医療を届けることができる。

いつでも、どこでも、 心臓の健康状態を測定

カメルーンでは国民2,200万人に対して心臓専門医は50人足らずで、これは先進国と比較すると大変低い割合である。しかし、心臓疾患による死亡率は世界的に上昇しており、特に食生活や生活習慣、寿命が変わりつつあるアフリカでは、心臓病で苦しむ人々の見通しは暗い。

患者の多くが、自分が重い病気にかかっていることに気付いてさえいない。気付いていたとしても、専門家の診断を受け、心臓専門医の治療を受けるには何百キロと離れている。カメルーンの場合、心臓専門医は全員、ドゥアラとヤウンデという2大都市に集中している。診察予約を待つ間に亡くなっていく患者が非常に多いのである。

「医者を見つけるのは比較的簡単です。しかし適切な診断と検査を受けることは簡単ではありません。」とザンは説明する。「設備が整っていない病院が多いということも、問題を大きくしている要因です。大都市に住んでいれば適切な検査を受けられるでしょう。でも、農村部に住んでいたら、でこぼこ道を通って長距離を移動しなければなりません。多くの人々にとって、これは大変なことなのです。」

アフリカ初の医療用タブレット端末と言われているザンのCardio Padが、心臓病に苦しむ何万人ものアフリカ人の将来を大きく変えることは間違いない。この機器は、軽量で迅速、正確なうえに価格が手ごろなので、保健インフラが整っていない地域にとってはこの上なく実用的である。持ち運び可能なので、患者が近くの都市にある診療所まで費用をかけて長時間移動する必要はないのだ。携帯電話回線さえあれば、国立データセンター経由で心臓専門医にデータを送ることができる。

この機器は、カメルーンの農村部の多くには、複雑な医療機器の操作に必要な電気が安定供給されていない、というもう一つの大問題をも解決する。

2012年下旬、ザンは自身の発明で特許を取得した。

アルチュール・ザンの指導者でもある、カメルーンの心臓医療における第一人者、サミュエル・キンゲ教授がCardio Padが心臓医療にもたらすであろう大変革について語る。ビデオをご覧ください。

テレビ番組 からヒントを得たアイデア

2009年、コンピュター・サイエンスを学んでいたアルチュール・ザンは、医療にコンピューターを応用することに興味を持ち、知識を得るために病院を頻繁に訪れていた。「心臓病の患者のECG (心電図)を図る医療従事者に関するテレビ番組を見ていました。『どんな仕組みなのだろう』と思っていました。」ザンはヤウンデの大病院で心臓専門医を務めるサミュエル・キンゲ教授と偶然出会い、ECGに関する知識に必要な信号データ処理方法を学んだ。

アイデアから 試作品へ

Facebookのビデオでザンのプロジェクトを知ったカメルーン政府は、試作品開発のために3万米ドルを援助した。この助成金を使い、ザンは中国の起業家を訪れ、試作品20台の製造を発注し、仲間と共にHimore Medicalという会社を設立した。試作品のうち2台は、カメルーンの病院でテスト中である。

試作品から 製品へ

ロレックス賞の賞金を受け、ザンは母国の農村部に住む心臓病患者に命を救う診断を届ける。「カメルーン全土で500台のCardio Padを導入するのが目標です。」とザンは話す。Cardio Padは、完全診断キットの一部としておよそ2,500ドルで販売される予定で、。これは他の持ち運びできない機器の半分以下の価格である。母国の医療設備が整い次第、中央アフリカ諸国を中心に、世界中にこの機器を輸出する。

アルチュール・ ザン

2014年度ロレックス賞
ヤングローリエイツ受賞者

電力供給が途絶えがちなカメルーンは、世界をリードする医療機器を開発しそうな国には見えない。しかし、不利だからこそ、この26歳のコンピューター技術者は刺激を受け、母国を変えるべく先頭に立っているのだ。ザンは人々の生活を変える可能性を持つ、コンピューターと情報技術に魅了されている。

アルチュール・ ザン

2014年度ロレックス賞
ヤングローリエイツ受賞者

ヤウンデから22 km離れた村、ムバンコモの病院で、たった一人の医師の診察を待つ人々。心臓専門医の診察を受けるためには、農村部の患者は大都市まで移動しなくてはならない。ザンが発明した持ち運び可能な心臓モニター、Cardio Padは彼らの人生を変えるだろう。

アルチュール・ ザン

2014年度ロレックス賞
ヤングローリエイツ受賞者

カメルーンでは国民2,200万人に対して心臓専門医は50人足らずで、これは先進国から見ればほんのわずかな割合である。しかし、心臓疾患による死亡率は世界的に上昇している。保健サービスが整っていない地域での利用に適した、持ち運び可能で安価なザンのCardio Padは、何千もの人々の健康を大きく向上させるものと期待されている。

アルチュール・ ザン

2014年度ロレックス賞
ヤングローリエイツ受賞者

看護師か専門技術者が電極を患者に装着してCardio Padを操作する。デジタル心電図(ECG)で多項目にわたり心機能を図る。

Anyone can change everything

ロレックスは、世界に大きな影響を与える優れた人物を選び、重大問題に取り組むプロジェクトを支援する。

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アルチュール・ザンをフォローする。彼は自ら発明した機器を使って、母国の農村部に住む人々に心臓医療を届けようとしている。世界中の人々と共に、遠隔医療でカメルーンの医療を改革するザンを応援する。